こんにちは。社会保険労務士の専田です。

今、「働き方改革」の言葉に代表されるように
働き方、労働法制度が激変期を迎えています。

その中でも目玉の一つとされているのが、
「有期契約労働者の無期転換対応」です。

 

既に対応準備を終えている会社もありますが、
実態としては、まだ先の話だとのんびり構えている
会社も多いと感じます。

実際に
「いつから、何をしなければならないの?」
という相談もここにきてよく受けるようになって来ました。

さて、どのような人がいつから対象となるのか?
ポイントは次の3点です。

①対象となるのは、有期雇用の契約期間が5年を超えた
 従業員であること

②従業員本人が無期転換を希望していること

③転換が始まるのは、2018年の4月以降
 ※ただし、契約期間の定めによって対応時期は異なりますので
  注意が必要です。

早めの準備が必要です!

早めの準備が必要です!

今後は有期雇用の労働者が5年を超えて契約が更新されて
本人が希望した場合は無期雇用に転換しなければならない
ということですが、

「無期転換希望者は全員正社員にしなければならないのか?」
というご質問をよく受けますがそうではありません。

法律では、雇用期間を「有期」から「無期」とすることが必要なので、
正社員にしなければならないということではありません。

つまり、無期転換により、
週3日出勤、1日4時間勤務、時給1,000円の無期転換社員
ということもありえます。

こうして考えてみると、ちょっと中途半端な感じもします。
「こんな条件で無期転換を希望する人がいるのだろうか。」と。

この問題は、単に法制度に対応するというだけではなく、
今後の労働人口の減少といった社会構造の変化も見越して、
これを会社にとってどのようにプラスと転じるかという
視点が必要になってくるものだと思います。

ところで、働き方改革に合わせて、大がかりな改革を進める
会社も多く出てきており、しっかりと成果が上がっている会社も
ある一方で、なかなか効果が上がらず苦しんでいる職場も多く
あります。

 

何が違いとなっているのでしょうか。
それは、対応策が本当の意味で働くメンバーにとって効能の
ある施策になっているかどうかの違いであると思いますが、
根本的なところで共通の問題があると思います。

以前からよく聞く「NO残業デー」
昨今の長時間労働の抑制策としてもよく聞く施策ですが、
効能を上げるのがなかなか難しい施策の代表例でもあります。

何故うまくいかないのでしょうか。
具体的な要因とともに考えてみたいと思います。

 

■うまくいかない要因とは?

①具体策がなく、かけ声だけで始めてしまったケース

 水曜日はNO残業デーなので定時で上がりましょう…といった
 感じのモノ。

 徹底したとしても、その日にやり残した仕事は後に積み残されて
 いるだけ。

 明日残ってやるか、持って帰って家でやるか…実際に働く立場
 から考えると、あまりメリットはなくだたリズムを乱されているだけ…
 となりがちです。

②根性論型の総残業時間削減策のケース

 具体策や論拠は何もなく、これからやらねばならぬモノとして
 従業員に強要しているパターン。

 言われた側からすると

・そんないきなり帰れって言われても…
・今日中にならなければならない仕事があって…
・できるんだったら前からやってるし…

 といった思考に陥るケースです。
「『それを自分で考えるのが仕事だ!』なんていわれてもなぁ…」
 というボヤキが横行しているのも特徴でしょう。  

③これまで効率という視点があまりなかった職場のケース

 「今日も遅くまで頑張ってるな!」という社内文化で進んできた
 職場では、価値観が合わず浸透しにくいのが実状でしょう。

・ホントに帰っていいの?
・でも上司はまだ残ってるし… 
・これって残業つけるなって意味かな?
(つけなければやってもいいんだよね…という発想が生まれるケースが
 実際にあります)
   
④既得権益層の隠れた抵抗

 これまでのやり方の方が心地よかったり、長時間労働が当たり前
 になってしまって、そもそも変化を嫌う人達が、口には出さないものの
 抵抗感を示しているケースです。

 また、生活残業化が進み抵抗せざるを得ない事情を抱えているなど、
 個々にとっての不都合や心理的な要因によって取組が前に進まない
 パターンです。 
   

あげていけばキリがありません。
ただ、会社側の思惑がどうであれ、社員とともに改革を進めることが
できなければ、思うような成果を挙げることは難しいでしょう。

では、今回の「無期転換」にあたり、会社にとってプラスとなるような
施策は講じられないものでしょうか。

会社と社員の視点から整理してみます。

 

■会社側からの視点

 ・プラス面
  よいメンバーが定着してくれるとありがたい
  これまで以上にもっと活躍の場を広げてほしい
  やる気と実力がある人は正社員になってもらってもいい

 ・マイナス面
  事業が行き詰った時など、固定で抱える人材が増える事へのリスク
   ※これまでの景気変動の経験がよみがえる
  無期化することでモチベ―ションが下がる可能性はないのか
  仕事の質に問題がある社員でも無期雇用しなければならないのか

 

■社員からの視点

 ・無期雇用に転換した時のメリットは何なのかよくわからない
  →雇い止めがなくなるだけなのか?
 ・デメリットは何か生じるのか?
 ・希望を出す必要があると聞いたがどうしたらよいのかわからない

 

…と、こんな感じでしょうか。
まずは、無期転換者の人材活用や働き方について、きちんとした
イメージを持ち、それを対象者にきちんと説明出来ないことには
何も始まりません。

しっかりと対応しないと会社の態度が不誠実に映ってしまいます。
また、先んじて対応する周りの情報を聞くと不安になったり、
「他の仕事を探した方が良いのかな?」と疑心暗鬼になってしまう
ケースもあります。

また、会社側も法的な義務感ばかりが先行し、マイナス面のイメージ
しか抱けないケースも多いと思います。

 

一方でこういった状況全体を鑑み、社員にとって働きやすく
見直しをかけていこうとしている企業もでてきています。

これを機会に様々な施策を検討し、より「働きやすく」、
「やりがいのある」職場にしていこうといった活動です。

まず方向性をしっかりと議論し、方向性のイメージを
浸透させることを考えた上で、次のような形で具体策を
進めていきます。

 

■施策例
 
 ①社員群制度の見直し
  無期雇用化にともなってより活躍の場を広げてもらう
  社員群を構築し、やる気のある人にはさらに活躍をして
  もらえる土台を見直し再整備していきます。
  
  例
   改善前:パート社員→正社員→役職者   
   改善後:パート社員→準社員→限定正社員→正社員→幹部候補→役職者

  それぞれの役割定義と将来に向けたキャリアアップの見直しを
  行ないます。

 ②組織体制の再整備
  成長発展ととも必要な機能が増える事で複雑化した役割分担を一度
  抜本的に見直し、将来に向け整理整頓を行います。
  基本的には指揮系統をシンプルでわかりやすくしていきます。  

 ③人事制度の導入・見直し
  ①②ができると、次にできるようになるのがこのあたりです。
  組織と役割行動を落とし込んで人事制度を仕組み化していきます。 

 ④評価制度の導入・見直し
  ある程度の整備が進んできたらこの点も外せません。
  何故ならば、バブル崩壊までの間の年功型制度や職能制度、その後の
  成果主義制度が制度疲労を起こしているケースが多くなっているから
  です。2020年以降を意識して、今のうちから社員育成を意識した制度
  への転換を考えていく事が重要になってくると思います。

 ⑤賃金制度の導入・見直し
  発展の過程の中で、制度化されていない企業も多々あります。
  規模が発展してくると運用上も制度が必要になってきます。
  また、従業員側から見ると、頑張って成果を上げた場合、
  どのような処遇になるのかが見える化されるというメリットが
  あります。④⑤がセットになってくるイメ―ジです。 
 
 ⑥育成制度、体系の導入・見直し
  人材育成を計画的に進めていこうという施策です。
  ④を構築する段階で、自社の人材についての理想像を考えていく
  ステップがありますが、その具現化に向けて、④で線路を敷きながら
  これを加速させていく取り組みです。
  逆にここから初めて、状況を見極めて④に進むケースもあると思います。

 

実際には負担が軽い短期的なものから、本腰を入れて取り組む必要のある
中・長期的なものまで様々です。

しかし、どうせ無期転換をしなければならないのなら、この機会に働く
メンバーの個々の力を引き出す仕掛けを合わせて展開していくことも
考えるべきではないでしょうか。

 

来年以降の対応に向けて、会社と社員、そして顧客がそれぞれにプラスと
なるような施策としたいものですね。

当所では、人事・業務改善を得意とする中小企業診断士 専田政樹(弟)と
社会保険労務士の私、専田晋一(兄)との連係プレーでお客様の取り組みを
支援します。

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