こんにちは。社会保険労務士の専田です。

このところ、高齢者ドライバーによる重大な交通事故が続発しています。
高齢ドライバーについては、加齢による身体能力の衰えが懸念される
一方で車を運転せざるを得ない事情のある方もいるので、なかなか
「運転するな!」とはいえないところもあります。

ただ、仕事で車の運転を行うとなると話は全く変わってきます。
少なくとも企業として人を使うとき、万が一の場合は使用者と
しての責任が問われます。

 

いわゆる「運転手」といわれる職業ドライバー以外にも近距離の
送迎、配達など、職業ドライバーというほどではないですが、
「ちょっと車を運転することのある仕事」というのは、意外に
あると思います。

超高齢化社会の進展に加え、昨今の労働力不足等により、様々な
分野で65歳を超えても働く方が増えてきましたが、その中で車の
運転が業務に含まれる場合、企業としても慎重に判断する必要が
出てきます。

今回は、法令上様々な要件や義務が定められている旅客・貨物
運送業とは別に、ちょっと車を運転することのある仕事と高齢者
社員の労務管理について考えてみたいと思います。

事故が起きる前に…

事故が起きる前に…

さて、社会保険労務士として、様々な業種の諸手続きを預り、
労務管理に関する話を聞く中で、外国人に次いで活躍の場が増えて
いるのが高齢者だと思います。(ちなみにここでいう高齢者とは
概ね65歳以上の方です。)

ただ、実務として、会社の現場担当者から聞こえてくるのは…
「働いてもらえるのはありがたいがケガなどしないだろうか?」
「持病があるらしいのだけど、悪化して倒れたりしないだろうか?」
「お年寄りをこき使っているみたいで、心苦しい…」
…というように、「働いてもらえるのは、ありがたいけど心配」
というように、どこか思い悩む声が少なくないと思います。

 

これが、車の運転を伴う業務になると、会社担当者の声も、
「できれば、就かせたくない。」とハッキリ変わります。
しかし、実状としては、深刻な人手不足に悩む会社と働かざるを
得ない事情を抱える高齢者との間で成り立つ際どいバランスの
上で業務が回っているようなところがあります。

誰でも加齢と共に様々な能力が衰えることは間違いありません。
会社としてもこの点を踏まえて雇用管理を考えて行かなくては
いけませんが、ここで問題となるのが、運転の可否(就業の可否)
をどのように判断するかという「基準」です。

高齢者といっても当然、身体能力は人それぞれ異なり、80歳を超し
てもかくしゃくとして、車の運転も問題ない人もいれば、65歳未満
でも危なっかしい方もいます。

超高齢化社会の進展、現役年齢の伸張といった昨今の情勢を考えると、
定年制の廃止も一つの考えですが、その場合はむしろ加齢による能力
低下の個人差を踏まえて雇用契約や就労の可否を判断する客観的な
基準がより必要になってくると思います。

 

では、車の運転を伴う業務では、この基準をどのように考えたら
よいでしょうか。

やはり、車の運転に関することなので、実際の運転状況から判断する
ことになると思いますが、具体的には、次のような流れが考えられ
ます。

①一定年齢以上など、特定の条件に当てはまる社員が運転する車に
 ドライブレコーダーを
設置して運転状況を観察する。

②「①ドライブレコーダー」の記録により運転に問題が認められる
 社員
については、身体能力や運転技能をチェックする。

③「②運転技能チェック」により問題が認められる社員については、
 従事する業務の見直しや配置転換などを検討する。

「おっと危ない!」ドライブレコーダーの画像を確認してみると…

「おっと危ない!」ドライブレコーダーの画像を確認してみると…

随分と大仰な感じがしなくもないですが、廉価で使いやすい
ドライブレコーダーがどんどん普及していますので、このあたりの
確認作業は格段にやりやすくなったと思います。

①~③について、もう少し詳しく見てみます。

①「ドライブレコーダー」の設置
 まずは、運転の適否を判断する対象となる社員を抽出する基準が
 必要となります。

 これについては、一定の年齢に達した社員、事故の扱いとならない
 軽微な車両損傷や業務中の交通違反などが基準として考えられます。

 ドライブレコーダー設置後は急ブレーキなどの特定の条件で記録
 されるイベントビューアの検証を中心に進めていきます。
 検証については、安全運転・事故防止に関するコンサルティング
 サービスを利用する方法もあると思います。

 なお、ドライブレコーダーは必須ではありません。
 運転状況を把握する方法が別にあれば、そちらの方法でもよいと
 思います。

②「身体能力・運転技能」のチェック
 「①」により、問題が認められた場合は、運転の可否について
 ”見極める”必要があります。見極め(チェック)については、自動車
 教習所の要領で教官役の管理担当者が、ドライバーである社員の運転
 する車両に同乗し、運転状況をチェックします。

 チェックポイントとしては、運転技能の低下で出やすいとされる
 以下の項目を中心に行ないます。なお、以下の項目は高齢者の事故
 傾向などを参考にまとめてみました。

 イ:車庫入れ、縦列駐車がきちんとできるか。
  (駐車枠のライン内にきちんと入れることができるか)

 ロ:車線変更や合流をスムーズに行なうことができるか。

 ハ:交差点通過時、特に右左折時の安全確認が適切に行なわれて
   いるか。

 ニ:車線、進路変更時にウィンカーの出し忘れがないか。

 ホ:走行中に車間距離や速度を一定に保つことができるか。

 会社や業務によりこのあたりの判断要素は変わってくると思いますので、
 必要な事項があれば、これに加えてください。

③運転可否の判断
 「②」により、運転させることに問題があると判断せざるを得ない
 場合は、その高齢者社員に関する雇用契約の内容も踏まえて判断する
 ことになります。
 
 また、判断に迷う場合は、いわゆる”経過観察”のような扱いとして、
 定期的に①~②のプロセスを行なうことも考えられます。

 前者の場合、会社として、配置転換や雇い止め、さらに厳しい判断を
 求められることも出てきますが、客観的に合理的な基準とプロセス
 設けることで、労務トラブルに発展するリスクも減らせるのでは
 ないかと思います。
 

高齢者雇用の現場からトラブルとしてよく聞かれるのは、
「Aさんは契約更新されたのに、何故私はダメなのか?」という
不公平感から生じるトラブルです。

そして、そのような雇用管理上の判断が分かれた理由について
会社が
きちんと説明しない、できないことにより、トラブルが
こじれて
います。

増加傾向にある高齢者の雇用を踏まえ、運転業務の就業について
だけではなく、「どのような条件を満たす方に働いてもらうか」
という高齢者雇用全般について客観的な基準が求められている
ように思います。

長くなりましたが、参考としていただけましたら幸いです。

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