適正受給

こんにちは。管理部支援.com の専田です。
世情を反映しているのでしょうか。最近、助成金についての
相談を受けることが増えてきました。

 

一言で助成金と言っても、先に景気対策で行われた
「エコカー補助金」や「太陽光発電の助成金」など、
よく考えてみると世の中に助成金・補助金というのは
数えはじめると気が遠くなるくらいありそうで、
国から市区町村まで、その実施主体も実に様々です。

ちなみに厚生労働省が所管する事業主向けの
「雇用・労働」に関するものだけでも結構な数になります。
主だったものだけでも40近くあるのではないでしょうか。
(途中で数えるのを止めてしまいました)

 

私は、助成金が専門というわけではありませんが、
縁あってか、試行雇用奨励金(トライアル雇用奨励金)や
キャリア形成助成金雇用調整助成金・中小企業緊急
雇用安定助成金
などの助成金を扱う機会がありました。

 

社会保険労務士が扱うこれら助成金は、雇用保険制度の
いわゆる「雇用二事業」といわれる雇用安定事業と能力開発
事業に基づくものです。

これらの制度は、雇用保険の被保険者(労働者)を雇用する
事業主を支援するだけでなく、職業に就いている人、これから
就こうとする人の支援も行うものです。

 

事業主や人事担当者の方がこれらを正しく理解し、
活用できれば経営上大きな
プラスとなるだけでなく、
労働者の支援にもつながるという実に素晴らしい制度
です。

 

しかし、そうとばかりもいっていられない現実があります。
それは、「まず、助成金ありき」の考え方です。
基本的に雇用に関する助成金は支給されるものであり、
返還は不要です。つまり、一定の要件さえ満たせば「タダ」
で貰えるお金ということになります。

 

しかし、そんなに甘くはありません。注意しないと助成金の
支給を受けたがために
会社の経営の自由度が損なわれる
可能性も
あるのです。

例えば、「社員の解雇」があります。
大半の雇用に関する助成金は、受給資格として「過去6ヶ月
以内に社員を解雇したことがない」という要件があります。

また、解雇した場合は、解雇日以降、6ヶ月間は支給が
受けられず、助成金によっては、支給済みの分の返還を
求められることもあります。

もし、受給を検討中の会社に整理解雇の必要性が生じたら、
ないしは生じる可能性があったらどうでしょうか。
方針なき助成金の受給は会社を歪めてしまいます。

実際に助成金の受給停止を避けるために本来「会社都合の退職」
であるところを「自己都合退職」として手続きがなされ、解雇された
社員が本来受けられるはずの失業保険が受けられずトラブルと
なったケース
は実際に発生しています。

 

また、「より高額なモノを」という具合に助成金の受給額で
チョイスする、助成金の支給を受けるためだけに会社の制度を
変更する、(そのために本来会社が必要としないような人を雇い
入れる)挙句の果てに助成金マニアみたいになってしまった方も
実際にいるのですが、このような助成金の活用は本末転倒では
ないでしょうか。

 

しかし、これだけなら(決してよくはありませんが)まだマシな方で、
最悪なのは、表題にあるような「不正受給です。
これは、論外どころか犯罪です。

特に支給額の大きい「雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定
助成金」や緊急人材育成・就職支援基金事業に基づき実施される
基金訓練で散見されるようです。

額が大きいだけにひとたび発覚するとマスコミによる取り扱いも大きく、
刑事訴追を受ける可能性も非常に高くなります。

 

以下は、報道された不正受給の一例です。
◆職業訓練費を不正受給 厚労省が8,290万円返還請求
(2011年4月21日 朝日新聞)

こんな大金、いったいどうやって返すのでしょうか?
というより返せるのでしょうか?

同じ事件での厚労省のプレスリリースです。
◆厚生労働省HP  基金訓練の不正事案の調査結果等の
公表について

本件では不正受給を行った団体だけでなく、訓練生の刑事訴追も検討と
報じられています。

 

実際に各都道府県労働局でもこうした不正受給の摘発には
力を入れており、不正受給の告発専用メールアドレスを設けて
いる局もあるくらいです。

◆東京労働局HP 「各種助成金制度のご案内」
中段に不正受給防止対策強化、告発用のメールアドレスが掲載
また、これまで雇調金・中安金で不正受給を行った会社の概要がリンク
されています。

◆厚生労働省HP
~不正受給防止対策の強化第3弾~
「雇用調整助成金の不正受給が判明した事業所は事業所名・
金額等を公表します」

このような不正受給事案が発生するたびに、審査や提出書類が増え、
手続きが非常に煩雑となり、申請をためらう会社も少なからずあるのです。
また、このような不正事案に関与する社会保険労務士が存在することは、
非常に残念なことです。

 

雇用調整助成金などの活用で過去のリーマンショックの際、実際に倒産の
危機に瀕した会社を助けるお手伝いができたことは、私の誇りとするところ
ではありますが、最近の動向を見るにつけ、助成金を受けるには、助成金
に引きずられないモチベーションと誘惑にかられない高いモラル
が必要
だと思えてなりません。

実際に不正受給というのは、一度はじめると歯止めが利かないものと思います。
モラルではない、別の言い方をするのであれば、それは、「気概」でしょうか。

何らかの会社の方針があって、それと合致する助成金を「せっかくだから
使おうか?」
というくらいが理想だと思います。

 

今回の大震災を受け、ますます助成金の必要性が高まってきています。
適正な助成金の活用により、本当に必要とされるところが「助成」を受け
られることを願います。

 

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