こんにちは。管理部支援.comの専田です。

 

今回は3回シリーズでお送りしているシミュレーション小説
「会社を巻き込むSNSトラブルⅡ」の中編をお送りします。

労務管理の上でも重要な「会社を巻き込むSNSのトラブル」
の対応について、その中でも対応の難しい、管理職にまつわる
トラブルを検討しています。

気楽にお読みいただき、参考としていただければ幸いです。

 

【あらすじ】

 

主人公の「太郎」が勤務するスポーツクラブA社は
首都圏を中心に展開する関東でも中堅のクラブだ。

社長の遠縁にあたり、長く銀行の総務畑で過ごした
「靖男(59)」は、このA社で体調を崩して退職した
総務部長の後任として入社した。

しかし、靖男は社員も若く、業務内容も全く異なる
A社になかなかなじめずにいた。

中でもネットやスマホを利用したサービス展開の話
になるとほとんど理解不能の状態で、靖男は日増しに
焦燥感を募らせていた。

そんな中、社内で行われたソーシャルメディアを
利用した広告プランの検討をきっかけに若い部下
から「勉強をかねてソーシャルメディアを使って
みては?」と勧められた靖男はFacebookを使い
始めたのだが…

◆前回の記事(前編)はこちらから!

 

・部長のソーシャルメディアがウザイ!

 

「靖男」の入社と総務部長着任から間もなく5ヶ月に
なろうとしていた。入社当初、A社になじめず、焦る
姿はまるで嘘のようだ。最近は、若い社員と談笑する
姿もよく見かける。

ネックとなっていた靖男と若手社員のコミュニケーション、
聞くところによると、ちょっと前にはじめたソーシャル
メディアが共通の話題となり、話が弾んだことがきっかけ
のようだったが、太郎はちょっと気になる話も聞いていた。

2日ほど前、太郎は給湯室で若い女性社員数名が立ち話を
しているのを見かけた。普段なら気にすることもなく通り過ぎる
のだが、「靖男」、「部長」という単語につい足が止まり、気が
気づけば聞き耳をそばだてていた。

はっきりとは聞こえなかったが、若手の社員は皆、靖男と
ソーシャルメディア上の付き合いを求められているらしく
そのやり取りを巡り、一部の社員から反感を買っている
らしい。

そして、井戸端会議の散会間際に交わされた、
「ホント、部長のFacebookってウザイよね~」という言葉は
太郎にトラブルの予兆を感じさせるのに十分なものだった。

 

・公私混同?

 

「靖男部長なんですけど、ソーシャルメディアのことで
社員と揉めているみたいですよ?」

先日、太郎が部下の課員数名と昼食を共にする中で部下の
花子が切り出した。口調は雑談めいているが、暗に太郎に
「何とかしてくれ」という意図を感じさせる。

「揉めているって、なんで?」

「誰彼構わず「友達申請」して、休みの日でも絡んできたり、
投稿内容を職場で詮索されたりするんですって。」

「あっ、それ聞いたことあるなぁ。オレもFacebookで説教された
ことありますよ。何もプライベートしなくてもいいのに。」
すかさず、部下の八郎が割り込む。

花子と八郎の話を要約すると…

・靖男が職場で「僕の投稿、見てくれた?」「最近『いいね!』
 つけてくれないよね」などと絡んでくる。「いいね!」を
 しないと不機嫌になる。

・「昨日○○してたよね」などと、投稿内容を職場の会話に
 絡めてくる。「あれ、どこの店?誰と行ったの?」などと
 詮索される。しかも他の社員の前で。

・休日の夜でもFacebookに投稿すると即「いいね!」が
 返ってくるので女性社員が「ストーカーみたい」と
 気味悪がっている。

・大勢の「友達」が見ているフィードで仕事のミスについて
 説教された。

…などなど。

靖男のソーシャルメディア、特にFacebookの利用には
ちょっと問題がありそうだ。「放っておくとマズいな…」
太郎はそう感じたものの、自分が対応するべき問題で
あるとはあまり考えていなかった。

「いいね!」しないと不機嫌に…

「いいね!」しないと不機嫌に…

 

・友達の友達は皆友達?

 

「ねぇ、『靖男さん』ってあなたの上司の方?」
その日の晩、太郎が帰宅すると妻は太郎の上着を受取りながら
話しかけてきた。

「そうだよ。5ヶ月前に就任した総務部長だよ。何かあったの?」

「Facebookで『友達申請』が来ているのよ。」
妻は苦笑を浮かべながらいった。友人と小さなネイルアート店を
営む妻は夫の太郎よりもアクティブにFacebookを使いこなして
いる。

「えっ?お前のところに?部長が?」
太郎は驚いた。”誰彼構わず”とは聞いていたが、まさか
自分の妻にまで友達申請が来るとは思ってもいなかったからだ。

「それで、どうしたの?」

「承認したわよ。別にヘンなこと投稿しているわけじゃないし、
あなたに迷惑がかかってもいけないし…」

”まいった”という表情を浮かべる太郎を見て妻は続ける。
「会社で何かあったの?」

「うん、実はな…」太郎は今日の昼食の際に八郎と花子から
聞いた話を説明した。

新しいモノと巡り会い、若手社員とのコミュニケーションも
弾んで熱中しているのはわかるが度を超してきているようだ。

「どこかで釘を刺しておかないとな…」太郎は妻に説明
しながら考えていた。

 

・業務に私情が

 

翌る日に行われた人事考課会議、各部署の責任者が集まり
社員の勤務成績の評価が行われる。今回の評価はボーナス
への影響も大きく、社内的にも関心が高い重要な会議だ。
責任者は靖男。事務局は太郎が勤める。

会議はスムーズに進行したが、優秀と評判の経理を担当する
賢一主任の評価を巡り靖男の”物言い”がついた。

「彼はそんなに優秀なのかねぇ」靖男が資料に目を通しながら
つぶやく。

事務局を務める太郎は、靖男が何をいおうとしているのか
わからず、疑問に思いながら答える。
「そうですね。彼の働きは十分な評価に値しますよ。」
出席者は皆靖男を見てうなずく。

「ちょっとコミュニケーション能力に問題があるんじゃないのか?」
靖男はさらに畳みかけるように続ける。なにやら不機嫌だ。

「そんな話は初耳ですが…。何かありましたか?」
太郎は靖男の意外な言葉に戸惑いながら答える。
他の出席者も一様に首をかしげている。

すると靖男は「いや、もういい」といったきり、腕組みして
黙り込んでしまった。明らかに不満げだ。

 

考課者会議終了後、太郎は部署に戻る途中、仲のよい同期の
管理職と考課者会議のことを話していた。

「賢一主任と総務部長って何かあったのかな?」
太郎は、靖男の賢一に対する反応が気になっていた。

「ん~、なんかね、Facebookが原因で揉めたらしいよ?部長に
『見境なく友達申請するのは止めてくれ』って言ったらしい。」

「何それ?」
「部長がね、賢一主任の彼女に友達申請したらしいよ。」

「えっ、賢一主任も?」
「どうしたの?何かあったの?」
「いや、何でもない…。それ、ヘンな話だよなぁ。部長も何を
考えているんだろうなぁ。」

お茶を濁すようにとぼけて答えた太郎だったが、靖男の
ソーシャルメディア利用が業務にも悪影響を及ぼしている
ことがこれではっきりした。

「さて、どうしたものか…」対応策を思い巡らせながら、
太郎は昨日からの出来事を思い返していた。

しかし、自分の上司、それも社内の実質№3にあたる
”偉い人”の暴走はこれだけではなかった。

 

・時事放談?

 

考課者会議から自分のデスクに戻った太郎を八郎と花子、
それに営業マネージャーの誠一が待っていた。皆の表情が
険しい。何かあったのは間違いない。

「太郎さん、ちょっと見て欲しいものがあるんだけど」
誠一がiPadを取り出し、yahoo!ニュースの画面から
隣国との国際問題のニュースを表示した。

そのニュースのFacebookコメントでは、問題の是非を巡り
激論が交わされている。画面をスクロールさせ、あるコメント
のところで誠一は指を止めると太郎に見せた。

「これなんだけど…」

靖男のコメントだ。

「スポーツクラブA  総務部長」とプロフィールには会社名
だけでなく、役職まで表記されている。コメントの内容は
正論ではあるが、反論や批判も寄せられていた。

他にもデリケートな社会・政治問題に複数のコメントを
投稿している。あたかもネット上の論客に議論を挑む
かのように。

「こういうデリケートな国際問題や政治問題のネット上の
議論に会社名から役職まで名乗って加わる意味って
あるのかな?」誠一は憮然としていった。

「場合によっては、ウチの会社が政治的な色目で見られる
可能性もあるね。一歩間違えば「炎上」するかも。」
そうなれば、あの悪夢※の再来だ。太郎は思わず天井を
仰いだ。

情報発信ってカ・イ・カ・ン!

情報発信ってカイカン!

 

「これだけじゃないよ。まだあるんだ」
「えっ?まだあるの?」
「そう。さすがに即アウトというのはないけど、
結構ギリなものもあるんだ。まぁ、見てよ。」

あっ、これ、取引先の接待に使った料亭だ。
社長の行きつけのクラブの写真もあるぞ?
投稿の中には業務の機微に触れる画像も
あった。

誠一からあらかたの説明を受けたところで太郎は
心配そうに見つめる八郎と花子に向き直った。
「社長と副社長の予定を確認してくれる?急ぎで。」

太郎は誠一のipadを見返しながら、社長への説明要領を
考えていた。

ソーシャルメディアにはまっているんじゃない。
情報発信すること自体にはまっているんだ。
靖男の投稿を見て太郎はそう感じていた。

「ところで、なんでこの話が私のところに?」
太郎はipadを誠一に返しながら尋ねた。

「えっ?この手の問題は太郎さんの担当じゃないの?」
「そんなわけないじゃない。誰がそんなことを…」

おそらく以前A社を襲った炎上トラブルの対応をしたから
皆が勘違いしているのだろう。太郎は苦笑するしかなかった。

【後編に続く】

 

※「あの悪夢」 前作で発生した炎上トラブル
詳細はこちらから!(シミュレーション小説? 会社を揺るがすSNSトラブル)
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