震災

こんにちは。管理部支援.comの専田です。

今回の「東北・関東大震災」では、震災・津波による被害もさることながら、
原発の「被害封じ込め」が難航していることから、いまだに復興へとシフトしきれず、
日本全体が重苦しい空気で覆われているように思います。

本来であれば、新卒者の入社式の話題が見受けられる時期ですが、今年は入社式を
自粛する企業も多数に上っており、なんとも寂しい春となってしまいました。

しかし、「入社」できるならまだいいほうで、中には震災の影響で「当面の自宅待機」や
ひどいケースですと「内定取消」といったケースも散見されはじめています。
今回は、新卒者の「内定」がどのようなものであり、震災のような大規模災害が内定に
もたらす影響について考えてみたいと思います。

まず、内定(採用内定)とは、どのようなものであるのでしょうか。
新卒者についていえば、内定者は労働者なのか、それとも学生なのでしょうか。
さらにいえば、いつまでが学生でいつからが労働者なのでしょうか。

労働基準法第9条によると、「労働者とは、職業の種類を問わず、事業または事業所
(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」とされて
います。難しくいうと、使用者の指揮命令に従って労務を提供し、その対価として
賃金請求権を持つ者ともいえるでしょうか。

新卒者が会社とこのような関係に入るのは、通常だと毎年4月1日です。
ですから、それまでは学生であり、労働者ではないといえます。しかし、慣習的に
会社が学生に対して内定通知を出し、学生から提出される誓約書を以って採用が
確定したとみなされます。

法的には、この内定が確定した時点で「始期付解約権留保付労働契約」が成立した
ということになります。

一見して意味がよくわからないので、分解して考えてみましょう。
まず、「始期付」とは、新卒者の場合、会社と指揮命令関係に入るのは、通常入社日で
ある4月1日です。この日がスタート、つまり始期となります。

次に「解約権留保付」とは、試用期間中の扱いを指します。会社によって異なり
ますが、4月1日以降、3~6ヶ月程度の試用期間中を設け、その間の勤務成績が
悪ければ「本採用」はしない、つまり「解約する権利を留保している」という
意味です。

この「始期付解約権留保付労働契約」について、内定が確定した時点で成立する
としたのは、この時点で他社への就職の機会を放棄(内々定辞退)するのが通常で
あるから、労働者ではないが、労働者と同様の保護を与えるべきとしたのが、
判例の考えです。

バブル期を境に激変し、厳しさを増す一方の「就活」事情ではありますが、入社する
会社は1社しかないことを考えれば、基本的な考え方は変わらないと思います。

では、この「内定」が取り消されるケースについて、考えてみたいと思います。
取消のケースとしては、大きく分けて次に3つにわけられます。

①卒業できなかった場合
大学生であれば、単位を落としたとか色々ありますが、卒業できないと分かった
時点で内定は問題なく取り消されるものといえます。

②私傷病のケース
内定者が病気やケガなどで、就労できない場合はどうでしょうか。
これも基本的に入社日から就労できるかどうかで判断されると思います。
容体にもよりますが、短期での回復が望めない場合などは、やはり内定は
取り消されると考えられます。

③業務の都合(会社都合)のケース
最近では、大手航空会社の例などがありますが、経営難などの会社の都合による
内定取消については、「その9 震災と整理解雇」で検討した「整理解雇の4要素」
に準じて適否が検討されます。
採用内定者と非正規社員の関係については難しい問題ですが、採用内定者の雇用を
優先するとした裁判例もあります。
(日本電子事件 東京地八王子支決5.10.25)

震災直後の混乱から少しずつ落ち着きを取り戻しつつある被災地では、被害の全容が
明らかになるにつれ、雇用面を含め様々な問題が露呈し始めています。
それも、事業所の全損による「全社員解雇」など、特に漁業関係については、まさに
壊滅的な損害です。

手こずる原発の事故処理とも相まって、首都圏以西でも消費の手控えや自粛ムードが
広がりはじめました。
そして、今後予想される経済混乱を控えて厳しさは一層増していくものと思います。

雇用面において、今回の震災を理由に様々な雇用調整が必要なのは間違いありません。
しかし、だからといってすべての「雇用調整」が許されるわけではないのです。

今回の震災のような大規模災害における内定取消については、「内定を取り消さざる
を得ないとする会社」が、災害によりどのような影響を受けたかを「整理解雇の4要素」
を考慮しつつ、個別具体的に検討されることになると思います。
そして、その判断には「地域的状況」が考慮されることになるでしょう。

最後に内定取消についての実務的な解決についてみてみますと、大半のケースで
「金銭的解決」が図られているようです。目安としては、最低「年収分」が考えの一つと
してあります。根拠は、「就職が1年遅れることになるから」というものです。

ただし、これは、他社の就業機会を放棄した、上記で扱った「内定者」に限られるものです。
また、通常の経済不況を理由としたケースであるわけですから、今回の震災のように大規模
災害で被災した企業にすぐに当てはまるものではありません。

次に入社時期繰り下げ(採用延期)についても「使用者の責に帰すべき事由」であるか
どうかで、法定の休業補償を行わなくてはならない可能性も十分にありますから、
内定取消同様、慎重に判断するべきです。
迷った場合は、事前に専門家に相談されることをお勧めします。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

労基や労務問題からマイナンバーやSNS問題まで「こんな事聞いても大丈夫かな?」ちょっとでもそう思ったら、その悩みをお聞かせください。初回相談は無料です。