大規模災害

こんにちは。管理部支援.comの専田です。

前回は、震災(大規模災害)によって、整理解雇をせざるを得なくなったときに
「整理解雇の4要素」を踏まえてどのように対応するべきか、という点について
検討してみました。

この「4要素」について、震災時(大規模災害時)と平時の経済不況による
整理解雇とでは、状況も異なるので、厳密な検討はされないのではないか
という点と「4要素」は「大企業」向けの判断基準、要素であり、中小零細企業に
そのままあてはまるものではないということは前回述べたとおりです。

では、何故取り上げたのかというと、これらが整理解雇に際しての判断指針として確立
されており、状況も会社の規模、雇用形態が異なろうとも、この「4要素」に即して
検討される局面があるからです。

ただ、この「4要素」もさることながら、整理解雇を行った時点で労働基準法上の
問題があってはいけません。今回は、労働基準法で定める解雇手続について、震災
(大規模災害)という視点で検討してみたいと思います。

まず、労働基準法では、解雇について、以下の制約があります。

第19条「解雇制限」で、以下の2つの期間とその後の30日間は解雇ができません。
(1)業務上の負傷・疾病による療養のために休業する期間
(2)産前産後の女性が同法65条の規定(産前6週間、産後8週間)により休業する期間

ただし、以下の2つの場合は、行政官庁(労働基準監督署長)の認定を受けることに
よって、上記の期間であっても解雇できます。
①上記(1)において打切補償を行う場合(労基法第81条に規定)
 ②天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

次に、
第20条「解雇予告」で、「少なくとも30日前に予告するか、30日分の以上の平均賃金
(解雇予告手当)を支払わなければならない」と定められています。
なお、解雇を予定する日まで30日に満たない場合は、その不足する日数分の平均賃金を
支払うことで足ります。
(平均賃金については、【その4 休業手当の計算方法】を参照)

ただし、20条についても例外があり、以下の2つの場合はその必要がありません。
また、19条と同様に労働基準監督署長の認定が必要です。
(1)天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
(2)労働者の責に帰すべき事由により解雇する場合(いわゆる重責解雇)

続いて、第21条では、解雇予告制度の適用除外として、次のように規定されています。
(1)日々雇い入れられている者
(2)2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(3)季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(4)試みの試用期間中の者

なお、(1)の場合、30日を超えて、(2)、(3)の場合、所定の期間を超えて、
さらに(4)の者14日を超えて引き続き雇用される場合は、適用除外となりません。
また、(4)の試みの試用期間中とは、各会社で定めている3ヶ月などの「試用期間」
ではありませんので、注意が必要です。

まとめますと、第21条で定める者以外は、第19条で解雇が制限される者であっても、
「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」
(第19条第1項但書および第20条第1項但書)という要件を満たせば第20条で
定める解雇予告、手当の支払いを要しないということになります。

では、この「要件」について見てみたいと思います。
この要件については、厚生労働省の通達「昭63.3.14基発150号」により詳しく
説明されています。長いので、ここでは要約します。

「やむを得ない事由」とは、以下の2点に分けられます。
(1)天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的であること。
(2)経営者として、社会通念上採るべき必要な措置を取っても避け難いこと。

そして、具体的事例として、以下の2点を挙げています。
①火災による事業場の焼失(事業主の故意、重過失を除く)
②震災に伴う事業場の倒壊、類焼により事業の継続が不可能となった場合

また、該当しない例として、以下の4点を例示しています。
①法令違反による資材等の没収
②税金の滞納処分による事業廃止
③経営上の判断ミス
④取引先の影響を受けた資金難

次に「事業の継続が不可能になる」とは、「事業の全部又は大部分の継続が
不可能となった場合」をいうとされ、次の3つの場合は含まれないとされています。
(1)事業の中心となる設備が滅失を免れ、多少の整理解雇を行えば、事業
継続が可能な場合。
(2)同様に整理解雇により別個の事業に転換しうる場合。
(3)操業中止は一時的なもので事業の状況から、近く再開復旧の見込みが
明らかである場合。

以上の通り、要件を満たすためのハードルはかなり高いことが分かります。
会社も大変ですが、労働者の生活保障を省いてまでの合理性というのは、よほどの
ことというのが伺えます。

次に災害で解雇予告除外認定が認められたケースについてご紹介します。
『…本社および工場の大部分が罹災のため(中略)なお、該工場が、残務整理の
為、取敢えず一部労働者の解雇予告除外認定の申請をなした場合と雖(いえど)も、
認定して差し支えない。』(昭23.8.4 基収2697号)

もう一つ、下請工場におけるやむを得ない事由についての通達です。
もっぱら親会社から資材資金の供給を受けていた下請工場において、親会社の
経営困難が事由とされる通達です。
『(親会社の経営困難は)法律的にいえばやむを得ない事由による事業継続困難とは
認められないが、当該労働者について引き続き労働契約を継続させる実益がない場合
には運用上然るべく認定せられたい。』(昭23.6.11基収1898号)

最後にまとめますと、これらの解釈からは、まさに倒産の危機、ないしは解雇予告を
することで会社が倒産しかねないという客観的かつ合理的な理由がない限り「除外認定」は、
認められないと読み取れるのではないでしょうか。

また、申請にあたっては、実務的には、別添の「除外認定申請書」に合わせ、「罹災証明書」を
初めとした事業継続に関する甚大な影響を証明する疎明資料が必要となります。
もし、不幸にしてこのような申請を行わざるを得ない方がありましたら、参考にして
いただければと思います。

なお、福島第1原発の動向を含め、このたびの震災はまさに「未曽有の大災害」で
ありますので、判断・解釈において行政の変更もあるものと思います。
今後、こうしたトピックスについても扱っていきたいと思います。

またまた長くなりましたが、少しでも参考になれば幸いです。

除外認定申請書(様式2号)
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