震災

こんにちは。管理部支援.comの専田です。

このたびの「東北・関東大震災」を受け、大規模災害と労務管理をテーマに
検討しています。

前回までは、主に震災(災害)による休業と労働基準法第26条で定める
「休業手当」について、また、計画停電やBCP的観点から在宅勤務制度、
さらに雇用調整助成金についても検討してきました。

災害直後から1週間くらいは、会社も被害を受けているかもしれませんし、
取引先などの被災状況や社会的混乱なども影響し、操業できないであろう
ことは十分にあり得ます。

そして、会社も1週間程度であれば「会社都合の休業」として、休業手当を
社員に支払うことも不可能ではないと思います。
ただ、長期化するようであれば、前回紹介しました「雇用調整助成金(または、
中小企業緊急雇用安定助成金)」の活用も検討するべきです。

しかし、助成金を活用しても災害からの復旧と将来的な業績回復が見込めなけ
れば、ただの時間稼ぎにしかならず、結果として、会社と社員の双方が「決断」
の時期を逸することになり、お互いに不幸なことになってしまうのではないで
しょうか。

この場合、社員を整理(整理解雇)することで会社が持ち堪えられそうならば
迷わず決断するべきです。中には「社員は家族も同然」と考える会社もあるかと
思いますし、個人的にそういう考えは大好きなのですが、判断が遅れるとそれだけ
対応も難しくなり、損失も膨らんでいきます。

会社という「艦(船)」が失われることは、「乗組員」である社員全員が路頭に迷う、
「遭難」することを意味します。また取引先や関係者といった「僚艦」をも巻き込み
かねません。間違っても経営者が「艦と運命を共にする」というようなことがあっては
なりません。

さて、大規模な災害、特に今回の震災によりやむを得ず「整理解雇」をせざるを得ない
という場合、どのような点に留意したらよいでしょうか。
ここでは、トラブルとなった場合の最終解決手段である裁判、判例に基づいて検討
してみたいと思います。

さて、整理解雇のきっかけが不況などの業績不振に端を発するものであれば、
「整理解雇の4要素」といった判例法理を十分に考慮するべきですが、今回の震災の
ような場合は、ちょっと違ってくると思うのです。
まずは、この「4要素」がどのようなものか見てみたいと思います。

「整理解雇の4要素」とは、要約すると整理解雇を行う場合には、次の4つの要素を
枠組みとして解雇の適否を総合的に考慮して判断しようというものです。

1.人員削減の必要性

2.解雇回避努力

3.人選の合理性

4.手続きの妥当性

(東洋酸素事件 東京高裁判昭54.10.29ほか)

このうち、1については、「まさに倒産の危機に瀕している」などの防衛・緊急避難的
理由が、2は、経費節減にはじまり、新卒採用の中止、希望退職の募集、一時帰休…
などの手順を踏んでいるかという点ですが、今回の震災のような災害の場合、これらの
要素はあまり厳格に適用(考慮)されないのではないかと思います。

ただし、私はこの適用(考慮)の基準?については、「地域によって異なる」と考えます。

地域でいうと、東北地方の被災地では、激甚な被害を出していること、早急な経済
体制の復旧が求められていること、雇用保険給付(失業保険)をはじめとした数々
の特例措置が講じられていることなどを考え、仮に整理解雇をせざるを得ないと
しても認められる余地は大きいと思うのです。

しかし、首都圏、特に都心部以西では、仮に震災の影響があったとしても緊急度や
企業防衛的な面からみても、その必要は少なく、やはり「4要件」に即した検討が必要
であると考えます。

なお、実際問題として、「整理解雇の4要素」は大企業向けの判断要素といえ、
中小零細企業にそのまま適用され得るものではありません。

例えば、社員30人程度の会社が経営難(災害以外の理由を含む)に陥り、整理解雇が必要と
なったとして、希望退職の募集等を行うことは難しいものがありますから、
そこは会社の規模や雇用実態を踏まえて解雇の適否が判断されることになります。

なお、整理解雇については、被災地であってもそれぞれの会社の実態に即して
判断されるものでありますから、「被災地であれば、解雇は認められる」とか
「解雇しやすい」というようなことではありません。

また、今回の震災で労働基準法で定められた解雇予告、解雇制限などの規定が
免除となるわけでもありません。この点は十分にご注意ください。

次回は、労働基準法で定める解雇の手続きについて見てみたいと思います。

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