こんにちは。管理部支援.com の専田です。

「もしも、社員が行方不明になったら?」
このような場合の実務対応をテーマに検討している
このシリーズ、早くも3回目となりました。

社会人として新生活を切るこの季節に何だか微妙な
テーマで恐縮ですが、今回はこの問題に対応する
ための
就業規則のあり方や退職手続きの方法
などを検討してみたいと思います。

 

ある日を境に、社員が出社しない、連絡が取れない、
いわゆる「行方不明」となってしまうケース。

「仕事のことで思い悩んでいたようだ」というように
兆候がある場合もありますが、忽然と姿を消してしまう
ケースも決して少なくはないようです。

会社として、家族と連絡を取り、やきもきしながら
心当たりを探しているうちに、3日、1週間、そして
半月というように時間だけがいたずらに過ぎていきます。

 

行方不明の社員、実際に働いていないので、給与は
生じません。しかし、社会保険料の支払いは必要です。

それも会社負担分だけではなく、行方不明社員の給与は
ゼロなわけですから、実際には本人負担分も会社が
立て替えることになります。
(住民税も考慮する必要があります)

この負担、会社としては決して軽くはありません。
また、こうした保険料などのコスト負担だけではなく、
代替人員の確保など業務上の必要も生じます。

このように、行方不明社員の身を案じる一方で、
その状態が長期化すれば、会社としては、
やむを得ず雇用関係を終了させる必要が出てくると
思います。

 

では、実際にはどのような対応をしたらよいのかを
検討します。

まず、この行方不明社員の問題に対応する場合、
就業規則の規定が非常に重要となります。

具体的には、退職に関する条項に「行方不明」
退職として扱われる理由の一つに入れておくことで、

・会社に連絡がなく「30※1を経過し、会社が所在を
 知らないとき

…は当然(自動的)に退職というような規定です。

 

これを社員の死亡や休職期間の満了のように事由が発生した
場合は、「当然に退職」として扱うように定めます。

 

こうした規定がないと、扱いとしては、解雇となります。
解雇の場合、会社の「解雇の意思」が社員へ伝わる(到達)
ことが必要ですが、相手は行方不明で連絡が取れません。

そうなると、これまで何度か見ました、公示送達(民法第98条)
の方法を取るのが正しいやり方になります。

しかし、これは、手続きが煩雑で費用もかかり現実的ではなく、
その内容は裁判所の掲示板や官報にも載せられることになる
ので、会社のトラブルを公表
するような形になってしまいます。

このような煩雑さやデメリットを避けるためにも就業規則による
「当然退職」の定めは必須であるといえます。

 

次に就業規則の規定が問題ないことを前提として、
実際の退職手続きの要領についてみてみましょう。
まず、退職手続きとしては、以下のものがあります。

1.雇用保険の資格喪失

2.社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失

3.住民税の異動届

基本的には、通常の退職手続きと同じですが、これらの
手続きを就業規則で規定する一定期間経過後に行います。
(例えば、30日経過後など)

実際の手続きに際しては、行方不明から退職手続きに至る
経緯がわかる資料が必要になります。

具体的には、以下のような資料を元に「行方不明社員について、
就業規則で定める当然退職の規定に該当するので、退職手続きを
行う」という説明ができるように準備します。

 

①行方不明前後の出勤簿、賃金台帳
(最終出勤日などを確認するため)

②就業規則の該当条項の写し
(当然退職の条項)

③行方不明を説明できる資料
(警察で交付される「行方不明者届受理票」など)

④全般的な経緯を説明する経緯書
(事業主名で行方不明から退職手続きまでの経緯を説明
した書面など)

このうち、③④については、必ず求められるわけではありませんが、
ハローワーク・年金事務所での手続きの際に説明を求められることが
多いので、用意しておいた方がスムーズだと思います。
それでは、以下、詳しく見てみましょう。

 

1.雇用保険の資格喪失
被保険者資格喪失届ハローワークに提出します。
離職証明書(A3サイズで緑色印字の用紙※2)の発行を受ける
場合は、退職理由を説明するための資料が必要となりますので、
上記の「資料が必要です。離職証明書を受けない場合であっても、
後でトラブルとならないように簡単な事情は手続き時に窓口で説明
しておくべきです。

 

2.社会保険の資格喪失
「1」と同じく、被保険者資格喪失届を年金事務所に提出します。
必要な資料、説明の必要も同じですが、健康保険証の回収が
できないときは、「回収不能・滅失届」も必要です。

 

3.住民税の異動届
行方不明社員の退職について、住民税を徴収する市区町村役所
に届出ます。(給与天引きの取りやめ)

 

これらの手続き、必要書類・資料などについては、事情により
変ってくることもありますので、手続きする前に管轄するハローワーク
や年金事務所、市区町村に相談されることをお勧めします。

 

最後に行方不明社員への返却物(年金手帳など)社会保険料の
本人負担分の取り扱いについてですが、退職手続きに至るまでの
親族・保証人との連携が問題なければ、よく相談し、返却物の
預かりを依頼する方法もあると思います。

社保の本人負担分について、会社としては、こちらもお願いしたい
ところですが、無理にねじ込んでこれまでの関係を壊すことのない
ように注意するべきです。

 

長くなりましたが、参考にしていただけたなら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

※1:行方不明の期間を「50日」とする考えもあります。
 (民法627条)

※2:離職証明書はいわゆる「失業保険」をもらうために
必要な書類です。
発行しても渡す相手が行方不明なので、
実際の扱いには困るかもしれません。

行方不明社員に関するコスト負担もさることながら、その抜けた分を
どうカバーするかは、大きな問題です。
「おまけ 4コマまんが」のような悪循環にならないように対応したい
ものです。

(クリックすると別ウィンドウで開きます!)



にほんブログ村 士業ブログ 社会保険労務士(社労士)へ
にほんブログ村

労基や労務問題からマイナンバーやSNS問題まで「こんな事聞いても大丈夫かな?」ちょっとでもそう思ったら、その悩みをお聞かせください。初回相談は無料です。