こんにちは。管理部支援.com の専田です。

寒い日が続きますね。
今年の寒さといえば、日本海側の記録的な大雪と太平洋側でも
例年にない空気の乾燥と寒さが続くなど大変厳しい冬となっています。

 

冬場の健康管理といえば、「カゼの予防」。
特に「インフルエンザの予防」は大きな課題です。

昨年まで懸念されていた新型インフルエンザ
(インフルエンザ(H1N1)2009)については、世界に流行が
広がり、人々が新型インフルエンザに対して免疫をもつにつれ、
季節性インフルエンザと似た性質となり、季節的な流行を繰り返す
ようになっていきました。

これを受け、インフルエンザ(H1N1)2009についても、
厚生労働省では、平成23年4月からは、季節性インフルエンザ
として取り扱うことになりました。

その分?今年の冬は季節性インフルエンザ(主として香港A型)が
大流行しました。(※2012年当時)

全国的にピークは過ぎたようですが、関東地方では依然として
流行が続き、まだまだ注意が必要のようです。

さて、インフルエンザの流行とともに企業の労務管理上の
問題として必ずあがってくるのが、インフルエンザに罹った
社員の
処遇です。

社員本人がインフルエンザに罹っているいるような合は、
「治るまで自宅で療養(自宅待機)」とすることに問題は
生じないでしょう。

しかし、単に「インフルエンザが疑われる場合」や「社員本人は
何ともないが、同居の家族がインフルエンザを発症した」という
ような場合は、どう対応するべきでしょうか?
今回は、この問題について考えてみたいと思います。

 

まず、会社として対応を検討する必要があるケースは、以下のように
分けられるでしょう。

1.社員本人がインフルエンザを発症している場合

2.発熱等、インフルエンザが疑われる場合(疑似症患者)

 3.同居の家族がインフルエンザ患者など、感染の可能性が
  疑われる場合(濃厚接触者)

このうち、「1」については、「完治するまで自宅待機」で問題ないでしょう。
次に「2」についても、インフルエンザが疑われるくらいの重い症状ですから、
やはり「完治するまで自宅待機」で差し支えありません。

 

問題は、「3」です。会社としては、「シロ」とはっきりするまで、自宅待機
してもらいたいところです。

しかし、自宅待機中の給与はどうなるのでしょうか?
ここでさらに問題です。

自宅待機中の給与について、対応は以下の3通りに分かれると
思います。

(1)待機中も全額支給する 

(2)待機中について、ある程度支給する(一部控除) 

(3)待機中は支給しない(全額控除)

このうち、「1」は、問題になりえないと思います。
問題となるのは、2・3の場合です。

実際には、有給休暇の残日数があれば、自宅待機期間中を有給休暇で
処理する方法もありますが、労働者が拒んだり、有給休暇の残日数が
なかったりした場合の対応は難しいものとなります。 

以下、こうした「2・3」のケースについて検討してみたいと思います

 

まず、「自宅待機期間中の賃金はどうなるか?」についてですが、
それは、「自宅待機となった責任は誰にあるのか?」という形で
考えることができると思います。

この場合、自宅待機については、会社の責任でも社員の責任でもありませんが、
会社としては、他人に感染するような病気が疑われる社員に出社されては困ります。

しかし、社員からすれば、
「自分は何ともないのに出社を止められ、挙げ句、給与がもらえない(減らされる)
とはどういうことだ!?」と思うでしょう。

労働安全衛生法第66条と労働安全衛生規則第61条では、「病者の就業禁止」に
関する規定がありますが、季節性インフルエンザは対象ではない上に、発症して
いないとなれば、このケースで自宅待機を命じる根拠を見つけることは難しい
と思います。

 

では、賃金の額については、どうなるのでしょうか?
まず、民法の規定を見てみましょう。

民法536条2項(債務者の危険負担等)では、
「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、
債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。」と定められています。

わかりやすくいうと、「会社サイドの責任で働けなかった場合は、賃金を請求できますよ」
ということです。なんだか旅館やホテルのキャンセル料みたいですね。

ノーワーク・ノーペイの原則により、「働かなかったら給与はゼロ」となるのが普通ですが、
この場合、「全額」を請求しうるということになります。

 

次に労働基準法の規定をみてみましょう。
労働基準法第26条(休業手当)では、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合に
おいては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当
を支払わなければならない。」と定められています。

 

民法と労働基準法の違い。
それは、「額」もありますが、「債権者(会社)の責に帰すべき事由」の範囲をどこまで
認めるか?となります。

民法の規定は、取引における一般原則である過失責任を中心に考えられているのに対して、
労働基準法の規定は労働者の生活保護を中心に考えられた罰則付きの強行規定です。

つまり、労働者は労働の対価としてもらえる「賃金」で生計を立てているので、民法で
定める、広く世間一般の「取引」に関する原則よりも保護を手厚くしようという趣旨です。

社員の家族がインフルエンザにかかったことは、その社員の責任でも会社の責任でもありません。
会社が「濃厚接触者」である社員に自宅待機を指示することの合理性も理解できますが、それは
労働基準法の趣旨である「労働者の生活保護」よりも優先されるものなのか?という点が問題に
なります。

 

労働基準法の「使用者の責に帰すべき事由」に該当する事例としては、行政通達で以下のように
考えられています。

「機械の検査、原料の不足、流通機構の不円滑による資材入手難、監督官庁の勧告による操業停止、
親会社の経営難のための資金・資材獲得困難」(昭23.6.11基収1998号)

このように、大規模災害などよほどの事態でないかぎり、少なくとも労働基準法で定める「使用者の責」
には該当し、これを免れることはできないものと考えられます。

 

今回の結論としては、「濃厚接触者」である社員に休業を命令する場合について、有給休暇による処理
などの対応ができない場合、さらには就業規則などにこうした場合の規定がないと満額の賃金支払いが
必要となる可能性があり、最低でも労働基準法で定める休業手当分の支払いが必要であるというこに
なります。

 

ただ、どうしても「濃厚接触者」の就業になじまないという会社はあると思います。なじまないから
といって社員が一方的に不利益を被るような対応は問題ですが、自宅待機以外にも方法はあるかと
思います。

例えば、

・在宅勤務を認める

・潜伏期間中は会議室など、他の社員と隔離された場所で就労させる

というような方法が考えられ、実際にそうした対応を取っている会社もあります。

 

いずれにせよ、労使でよく話し合い、いざというときにトラブルとならないように就業規則などの
整備をきちんと行っておくことが一番重要なのではないでしょうか。そして、流行シーズン到来に
合わせて会社としての対応要領を社内周知する必要があると思います。 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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