正しい弁済

こんにちは。
管理部支援.comの専田です。

前回は、アルバイトに責任は問えるか(有責性)という点と
弁済を求められる割合の限界について検討してみました。
今回は、実務上の注意点について検討したいと思います。

前回までのとおり、アルバイトは軽易な業務をしてもらうために
割と簡単に採用されるわけですが、場合によってはアルバイトによって
「想定外のハプニング」が引き起こされることがあるということは、
ご理解いただけたものと思います。

では、採用手続きを厳格化すればいいのかというとちょっと違いますし、
管理を徹底すればいいというのも違うでしょう。
第一、アルバイトにそんなにコストをかけるわけにはいきません。
それでは、どのような対応策があるのでしょうか。

実務としては、採用時にせめて「職務の精励と秘密保持」を内容とした
「誓約書」を提出してもらうべきと思います。
場合によっては、故意(悪意)や重過失により発生した損害賠償の義務を
内容に追加することも考えなくてはいけないかもしれません。
これは、働く側の自覚を促すという狙いもあります。

法的にこのような誓約書がどこまで有効かという点については、見解のわかれる
ところです。しかし、あらかじめ書面として取っておかないといざというときの
対応はより困難になるのだけは間違いありません。

何だか人をはじめから疑うようで嫌な感じがしますが、トラブルは発生するものと考えて
備えるべきだと私は思うのです。

次に弁済の受け方について考えてみたいと思います。
判例(裁判例)上認められる弁済の範囲については、前回見たとおりですが、
アルバイト(労働者側)と会社の間で弁済額について合意が成立したとして、
会社はアルバイトからどのように弁済を受けるべきでしょうか。

一番簡単な方法としては、給料からの天引きがあると思いますが、
ここで問題となるのが、労働基準法第24条のいわゆる「賃金支払5原則」の規定です。
第24条で賃金は…
①「通貨」で
②「直接」労働者に
③「全額」を
④「毎月」
⑤「一定の期日」
…を定めて支払わなければならないと定められています。

弁済額を給料から天引きした場合、このうちの③「全額」払いに違反することに
なります。

では、どうしたらよいか。
最終的には弁済を受けるとしても、一旦は給与の全額を支給する必要があります。
一旦、給与の全額を支給して、その後、アルバイト(労働者)から任意に合意した額を
弁済してもらうというのが合法的な方法ということになります。

ですが、弁済が1回で済めばいいのですが、複数回にわたる場合は、会社もアルバイトも
大変面倒です。給料が銀行振り込みの場合でしたらなおのことです。

そこで、アルバイト(労働者)の合意を取り付けて給料から天引きするという方法が
あります。「給料支給後に毎回改めて会社に弁済するのは面倒なので、最初から
合意額を天引きしてください」という内容で合意書面を取り交わすのです。
タイトルは「覚書」でも「合意書」でも構いません。

この根拠となるものとして、次のような判例があります。
「労働者が自由な意思に基づいて使用者が労働者に対して有する債権と労働者の
賃金債権とを相殺することに同意した場合には、同意に基づく相殺は全額払い原則
に反するものではない。」
(日新製鋼事件 最高裁判 平成2.11.26)

繰り返しになりますが、あくまでもアルバイト(労働者)の「同意」に基づく天引き(相殺)
であることが必要です。

ただ、同意に基づき書面を取り交わしたとしても、労使間でトラブルとなった場合は、
「ムリヤリ書かされた!」といわれてしまうこともあり得ますからご注意ください。

今回検討したテーマはアルバイトに限りませんので、正社員などで似たような事例が
ありましたら参考になるものと思います。

また、検討すべき事項として、保証人や就業規則等の整備も必要になってくると
思いますが、これは別の機会に検討したいと思います。
少しでも皆さんのお役に立てたなら幸いです。

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